🕰 精工舎の幕開け。日本の時計史を塗り替えた懐中時計の物語 ┃おたからや大船東口
- おたからや大船東口店スタッフ3号

- 11 分前
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大船にお住まいの皆さま、こんにちは。おたからや大船東口店です。
日々、慌ただしく流れる現代。私たちはスマートフォンや電波時計に囲まれ、1秒の狂いもない時間を当たり前のように消費しています。しかし、そんな今だからこそ、あえて「自分の手で時間を動かす」という贅沢に、心を奪われる瞬間はありませんか?
今回スポットを当てるのは、日本の時計史の夜明けを象徴する存在、精工舎(せいこうしゃ)の懐中時計です。
ずっしりとした金属の重み、耳を近づけると聞こえる力強い鼓動。そして、指先に伝わるゼンマイを巻く感触。それは単なる時刻の確認を超えた、極上の儀式ともいえる体験です。明治から昭和にかけて日本の鉄道や軍、そして人々の生活を支え続けた「究極の機能美」の世界を紐解いてまいりましょう。

1. 「精工舎」という名の重み:服部金太郎が抱いた執念
「常に時代の一歩先を行く」
この言葉を旗印に、セイコーの創業者・服部金太郎が明治25年に設立したのが**「精工舎」**です。当時の日本は、時計といえば欧米からの輸入に頼り切っていた時代。金太郎は「東洋の時計王」を目指し、自国での一貫生産という無謀とも思える夢に挑みました。
🏰 舎(いえ)に込められた職人魂
精工舎の「舎」という文字には、ただの工場ではなく、職人たちが家族のように集い、技術を磨き上げる「家」のような場所でありたいという願いが込められていました。ここで作られた懐中時計たちは、単なる工業製品ではなく、当時の日本の最先端技術と職人の意地が結晶した「工芸品」でもあったのです。
2. 明治の挑戦:初の国産懐中時計「タイムキーパー」の衝撃
明治28年、精工舎はついに日本初の懐中時計「タイムキーパー」を完成させます。
それまでの日本で作られていた時計は、主要な部品を海外から輸入して組み立てるものが主流でした。しかし金太郎は、心臓部であるムーブメントの製造まで自社で行うことにこだわりました。この「タイムキーパー」の誕生は、日本が精密機器製造国として世界に名乗りを上げた、歴史的な瞬間だったのです。
当時の広告には「内外諸品に勝る」という威勢のいい言葉が並んでいました。それは単なる宣伝文句ではなく、欧米列強に追いつき追い越そうとした、明治という時代の熱気そのものでした。
3. 日本の「正確さ」を象徴する:鉄道時計としての誇り
精工舎の懐中時計を語る上で絶対に欠かせないのが、日本のインフラを支え続けた**「鉄道時計」**の存在です。
🛤️ 1秒の遅れも許されない現場で
かつて、国鉄(現JR)の運転士たちが手にしていたのは、精工舎製の懐中時計でした。蒸気機関車が走り、緻密なダイヤグラムを守り抜くために必要だったのは、極限の視認性と絶対的な信頼性。
昭和4年、精工舎の「19型」懐中時計が、当時の鉄道省によって正式に指定されました。それまで海外製品に頼っていた鉄道時計が、ついに国産品に置き換わったのです。
白磁のダイアル: どんな環境でも時刻を読み取れるよう、濁りのない白に太い黒のアラビア数字が並びます。
青焼きの針: 熟練の職人が熱を加えて色付けした、深く美しいブルーの針。
頑丈なケース: 振動や温度変化に耐えうる、実用一点張りの強固な造り。
これらは装飾のためではなく、すべて「正確に運行する」という機能のみを追求した結果生まれた美しさなのです。現在でも、新幹線の運転席にはこの伝統を受け継ぐセイコーの懐中時計が置かれています。大船駅を行き交う数多くの列車たちの安全も、この精工舎から始まった「正確さ」という文化の上に成り立っているのです。
4. 五感に響く「ゼンマイを巻く」という贅沢
懐中時計の最大の魅力は、リューズを回してゼンマイを巻き上げる、その瞬間にあります。
👂 指先と耳で感じる生命の躍動
カチ、カチ、カチ……。 指先に伝わる心地よい抵抗感と、リズミカルな音。この感触は、ゼンマイという鋼のバネに、あなたが「命」を吹き込んでいる証です。巻き上げた瞬間、時計の内部でバランスホイール(天府)が細かく振動を始め、止まっていた時間が再び動き出す。その瞬間、私たちは「時間という目に見えないもの」を、文字通り掌の中でコントロールしている実感を得るのです。
⚙️ 内部に隠された「機械の宝石」
ケースを開けると、そこには精密な歯車とネジ、そして摩擦を抑えるために配された「ルビー」の輝きが現れます。見えない部分にまで美しく磨きをかける。この「見えない美学」こそが、日本人のモノづくりの真髄です。
5. まとめ:大船の地で、時を慈しむ文化を繋ぐ
大船という街は、かつての撮影所があり、歴史と文化が深く息づく場所です。この街の空気感に、精工舎の懐中時計は驚くほどよく馴染みます。
「おじいちゃんが使っていた古い懐中時計が出てきたけれど、どうしたらいい?」 「動かないけれど、捨てるのは忍びない……」
もし、そんなお品物がございましたら、ぜひ私たちに見せてください。おたからや大船東口店は、鎌倉市で最も古い店舗として、精工舎が築き上げた歴史と、皆さまが大切にされてきた想いを、どこよりも深く理解しています。
たとえ動かなくても、そこには日本の時計産業を支えた「職人の魂」が今も眠っています。私たちはその価値を正しく見極め、次の世代へと繋ぐお手伝いをさせていただきます。
大船駅すぐの店頭で、ゼンマイが刻む「至福の鼓動」に共に耳を傾けられる日を、心よりお待ちしております。
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