🎨 江戸時代から続く「秘伝の赤」。今泉今右衛門が守り抜いた色鍋島の歴史
- おたからや大船東口店スタッフ3号

- 3月3日
- 読了時間: 5分
大船にお住まいの皆さま、こんにちは。おたからや大船東口店です。
大船駅を降り立ち、仲通り商店街の賑わいや観音様の静寂に触れる時、私たちはふと「変わらぬものの美しさ」に心を惹かれます。日本の伝統工芸の世界において、三百数十年の長きにわたり、一族の誇りとして門外不出の技を守り続けてきた伝説の「赤」があることをご存じでしょうか。
その名は、今泉今右衛門(いまいずみいまえもん)。
肥前・佐賀の鍋島藩において、将軍家や諸大名への献上品として、一切の妥協を許さず作られた「色鍋島」。その最も重要な美の要である「赤絵」を司り、現代では人間国宝としてその名を世界に轟かせています。今回は、大船の皆さまと共に、この「秘伝の赤」が紡いできた壮大な歴史と、その圧倒的な価値の正体を紐解いてまいりましょう。

1. 鍋島藩の誇り:選ばれし職人「赤絵屋」の誕生
色鍋島の歴史は、十七世紀、江戸時代の佐賀・鍋島藩にさかのぼります。当時、磁器は藩の威信をかけた重要な「外交手段」であり、最高の技術の結晶でした。
🏰 門外不出の「秘密結社」のような工房
鍋島藩は、他藩に技術が漏れることを極端に恐れ、山深い大川内に御用窯を設置しました。そこで作られる「鍋島焼」は、市場に出回ることのない、将軍家や大名のためだけの「献上品」でした。今右衛門家は、その仕上げの工程である上絵付け(特に赤の彩色)を専門に行う「赤絵屋」として、藩から特別な地位を与えられたのです。
🧣 命を賭して守られた「赤の調合」
今右衛門の赤は、単なる色ではありません。それは家系図のように、父から子へと、一子相伝で伝えられてきた「調合の記憶」です。かつては、レシピを盗もうとする者が現れないよう、作業は密室で行われ、その秘密を守ることは一族の命を守ることに等しい重みを持っていました。
2. 「秘伝の赤」が放つ魔力:なぜこれほどまでに人を惹きつけるのか
今泉今右衛門の作品を前にした時、誰もがその「赤」の深みに目を奪われます。
🔴 派手さではなく「気品」の赤
今右衛門の赤は、決して目に刺さるような派手な色ではありません。どこか落ち着きがあり、しっとりと濡れたような質感を持ち、磁器の白肌と対照をなすことで「格調」を生み出します。これは、原料となる酸化鉄の精製から、焼き上げの温度、そして筆致に至るまで、気が遠くなるような試行錯誤の末に辿り着いた、まさに「血の通った赤」なのです。
🌫️ 墨はじきと現代の感性
現代の当主、十四代今泉今右衛門氏は、江戸時代からの伝統を継承しながら、さらに高度な「墨はじき」という技法を極めています。墨で描いた部分が焼き上げると白く抜けるこの技法は、雪が降るような繊細な文様や、空気感の表現を可能にしました。伝統の中に「今」という息吹を吹き込むことで、今右衛門の作品は美術品としての価値を更新し続けています。
3. 歴史の変遷:藩の崩壊から「人間国宝」への不屈の歩み
明治維新により鍋島藩が消滅した際、今右衛門家は最大の危機を迎えました。藩というパトロンを失い、多くの御用窯が廃業していく中で、彼らを突き動かしたのは「色鍋島を絶やしてはならない」という不屈の精神でした。
🏺 十代・十一代の復興への祈り
生活が苦しい時代にあっても、今右衛門家は最高品質を求め続けました。単なる食器ではなく、観賞に堪えうる「芸術品」へと昇華させるための努力が、後に「色鍋島」を日本を代表する伝統工芸として再認識させるきっかけとなったのです。
🎖️ 歴代当主が刻む「至高の肩書き」
十二代、十三代、そして現代の十四代と、今右衛門家からは「重要無形文化財保持者(人間国宝)」が輩出されています。これは単に上手いというレベルではなく、日本の文化そのものを背負い、守り、発展させているという国家からの信頼の証です。大船の皆さまがお持ちの作品に「今右衛門」の銘があるならば、それは日本の頂点の技がそこに宿っていることを意味します。
4. 継承される価値:もし皆さまの元に「今右衛門」があるならば
これほどまでに高貴な今泉今右衛門の作品ですが、その価値は時を経るほどに高まっています。
📦 「共箱」と「銘」が語る物語
作品が収められた木箱、そこに記された当主の署名と落款(共箱)。これらは作品の履歴書であり、真贋を証明する重要な証です。また、作品の底にある「今右衛門」という銘の書き方によって、どの時代の当主の作品かが分かります。その一つひとつに、その時代の職人たちの熱い想いが込められています。
🤝 未完成やキズがあっても失われない品格
もし作品に僅かなキズやヒビがあったとしても、今右衛門の作品が持つ「格」は失われません。特に歴代の人間国宝の手による大作は、世界中のコレクターや美術館がその行方を注視しています。それは、これらが二度と作ることのできない、歴史の断片そのものだからです。
5. まとめ:大船の地で、日本の「赤」の真価を見極める
今泉今右衛門。それは、江戸時代から続く「秘伝の赤」を、現代という光の中に繋ぎ止めた奇跡の家系です。その作品を手に取ることは、数百年の歴史という重みに触れる体験に他なりません。
「昔、由緒ある贈り物としていただいた色鍋島のお皿がある」 「実家の整理をしていたら、今右衛門と書かれた立派な木箱が出てきたけれど……」
大船にお住まいの皆さま。もし、心当たりがございましたら、ぜひ私たちにお見せください。おたからや大船東口店は、地域で最も陶磁器の価値に精通した店舗として、今右衛門が込めた「赤」の深み、描かれた文様の繊細さ、そしてその作品が持つ歴史的価値を正確に鑑定いたします。
箱が古くなっていても、何十年も仕舞い込んでいたものでも構いません。今右衛門という名の伝説は、その存在自体が日本の宝です。大船駅すぐの場所で、皆さまが大切にされてきた「美の記憶」にお会いできるのを、スタッフ一同心よりお待ちしております。江戸から続く情熱の赤、その真価をぜひ一緒に確かめてみませんか。
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